JavaScriptフレームワーク:React.jsとVue.jsの違いを徹底比較

近年、フロントエンドの開発技術は急速に進化し続けており、JavaScriptフレームワークの選択もその一部です。
現在、React.jsとVue.jsは、フロントエンド開発の世界で最も一般的に使用される2つのフレームワークです。

これらはいずれも、高速かつ使いやすいUI(ユーザーインターフェース)を構築するためのフレームワークですが、本記事ではそれぞれの特徴はどのようなものなのかについて焦点をあて、徹底比較してみたいと思います。
フロントエンドとバックエンドの違いに関してはフロントエンドとバックエンドを徹底比較。仕事内容と給料の違いなどで詳しく解説していますので、興味ある方はぜひチェックしてみてください。

フロントエンドのフレームワークとは
フロントエンドのフレームワークは、ウェブサイトを作る際の道具箱のようなものです。自分で一から全てを作る代わりに、これらの道具を使って、もっと簡単に、効率よくサイトを構築できます。
フレームワークの中でも主に以下の3つが人気が高くよく利用されています。
- React
- Angular
- Vue.js
フロントエンドのフレームワーク使用者数推移

上の表を見ると、Reactは2016年から2022年まで常にトップをキープし、2番目にAngular、3番目にVue.jsというランクになっています。

本記事では中でも近年人気の高いReactとVue.jsに焦点を当てて解説していきます。
React.jsとVue.jsの違い
以下、React.jsとVue.jsの主な特徴を比較した表です。
特性 | React.js | Vue.js |
開発者 | 元GoogleエンジニアのEvan You | |
コンポーネント設計 | JSXを用いて コンポーネントを作成 | 単一ファイル コンポーネント (.vue) を採用 |
データフロー | Unidirectional(一方向) | Unidirectional(一方向) |
データバインディング | One-way(単方向) | Two-way(双方向) |
学習曲線 | やや高い (先進的な概念の理解が必要) | 比較的低い (初心者に優しい) |
人気とコミュニティ | 非常に人気があり、 大きなコミュニティ | 成長中のコミュニティ、 人気急上昇中 |
スケーラビリティ | 大規模アプリケーションに 適している | 主に小~中規模 アプリケーションに適している |
パフォーマンス | 高速(仮想DOMを使用) | 高速(仮想DOMを使用)、 一部ベンチマークでReactよりもわずかに高速 |
作成できるもの | 動画ストリーミングサービス 、ゲームのUI、CMSのUI SNSプラットフォーム、 リアルタイムチャットアプリケーション、モバイルアプリ | LP、ポートフォリオサイト、 コーポレートサイト、ウェザーアプリ、ToDoリストやタスク管理システム、ブログプラットフォーム、アンケートフォーム |
React.js
React.js(通常はReactと呼ばれる)は、Facebookが開発したJavaScriptライブラリで、ユーザーインターフェイス(UI)を構築するためのものです。特に、シングルページアプリケーション(SPA)やモバイルアプリケーションの開発において広く使われています。
React.jsで作成できるアプリ・サービス

- 動画ストリーミングサービス(Netflix、Disney+)
- ゲームのUI
- CMSのUI(Wordpress)
- SNSプラットフォーム(Facebook、Instagram)
- リアルタイムチャットアプリケーション(Whatsapp、Chatworks)
- モバイルアプリ
React.jsの主な特徴
- コンポーネントベース
- 仮想DOM
- Unidirectional Data Flow(一方向データフロー)
- JSX
- React Native
コンポーネントベース
React.jsはUIを再利用可能な部品(コンポーネント)に分割するという考え方に基づいています。これにより、コードの再利用が可能となり、テストやメンテナンスが容易になります。
例えば、以下のように「Button」コンポーネントを作成します。
component.js
1function Button(props) {
2 return (
3 <button onClick={props.onClick}>{props.label}</button>
4 );
5}
このコンポーネントは、異なる箇所やページで何度でも再利用することができます。また、必要に応じてプロパティ(props)を渡すことで、ラベルやクリック時の動作などをカスタマイズできます。
app.js
1<Button label="クリックしてください" onClick={() => alert('クリックされました!')} />
このように、コンポーネントを組み合わせることで、複雑なUIを効率的に構築することが可能です。コンポーネントベースの設計により、コードの再利用、テスト、メンテナンスが容易になり、開発プロジェクト全体の品質と速度を向上させることができます。

component.jsで作成したButtonというコンポーネント(部品)をapp.js(本体)で利用するといったイメージです。
仮想DOM
React.jsでは仮想DOM(Document Object Model)というコンセプトを採用しています。これは、実際のDOMへの直接的な操作を避け、性能を向上させるためのものです。Reactは変更があった場合に仮想DOMを更新し、それを実際のDOMと比較(差分比較)して、必要な部分だけを効率的に更新します。以下サンプルです。
jsx
1const [count, setCount] = useState(0);
2
3return (
4 <div>
5 <p>クリックされた回数: {count}</p>
6 <button onClick={() => setCount(count + 1)}>クリック</button>
7 </div>
8);
ユーザーがボタンをクリックするたびに、count
の状態が更新され、新しい仮想DOMが構築されます。Reactは新旧の仮想DOMを比較し、<p>
タグ内のテキスト内容だけが変更されたことを検出します。そして、この変更だけを実際のDOMに反映します。
このように、仮想DOMは実際のDOMの変更を最適化し、アプリケーションのレンダリングパフォーマンスを向上させる役割を果たしています。
Unidirectional Data Flow(一方向データフロー)
React.jsは親コンポーネントから子コンポーネントへの一方向のデータフローを採用しています。この概念は、データがアプリケーション内で一方向にしか流れないように設計するもので、コードの読みやすさと保守性を向上させるために役立ちます。
JSX
React.jsはJSX(JavaScript XML)というJavaScriptの拡張構文を採用しています。これにより、JavaScript内でHTMLのようなコードを書くことができ、コンポーネントの構造が理解しやすくなります。
以下は、JSXを使用したシンプルなReactコンポーネントの例。
JSX
1const Hello = (props) => {
2 return <h1>Hello, {props.name}!</h1>;
3};
このコードでは、<h1>
タグのようにHTMLに似た構文がJavaScriptの中で使用されています。JSXは最終的にBabelなどのトランスパイラによって通常のJavaScriptに変換されます。
上記のコードは、以下のJavaScriptに変換されます。
Javascript
1const Hello = (props) => {
2 return React.createElement('h1', null, `Hello, ${props.name}!`);
3};
この変換により、ブラウザが理解できる通常のJavaScriptになります。JSXは、コードの可読性と保守性を向上させ、開発者がUIコンポーネントの階層構造を直感的に理解できるようにするために利用されます。
React Native
React Nativeは、Facebookが開発したオープンソースフレームワークで、Reactの設計思想をモバイルアプリケーションの開発に応用することができます。通常、iOSやAndroidアプリを開発する際にはそれぞれのプラットフォーム向けのプログラミング言語とツールセットが必要です。しかし、React Nativeは、これらのプラットフォームで共通のJavaScriptとReactのコードベースを使用してアプリを開発することができます。
React.jsのメリット・デメリット
以下React.jsの主なメリットとデメリットです。
React.jsのメリット
- コンポーネントベースの構成
- バーチャルDOMの採用
- フレキシビリティ
- 強力なコミュニティとサポート
ーコンポーネントベースの構成
再利用可能なコンポーネントをベースにした設計を使用します。これはコードの再利用を簡単にし、開発速度を向上させます。
ーバーチャルDOMの採用
バーチャルDOMを利用して、実際のDOMへの変更を効率的に行います。これによりパフォーマンスが向上し、ユーザーエクスペリエンスが改善されます。
ーフレキシビリティ
Reactは他のライブラリやフレームワークと組み合わせて使用することが可能です。これにより、既存のプロジェクトに組み込んで使用することが容易になります。
ー強力なコミュニティとサポート
Reactは大きなコミュニティと豊富なリソースを持っています。これにより、問題が発生した場合には助けを得やすく、また多くのパッケージやツールが利用可能です。
React.jsのデメリット
- 初心者には難しい
- フレームワークではない
- 迅速な進化
- 設計決定の自由度が高い
ー初心者には難しい
Reactのコンセプトは初心者にとって難しく感じるかもしれません。特に、コンポーネントライフサイクルやバーチャルDOMのような概念を理解するには時間と努力が必要です。
ーフレームワークではない
ReactはあくまでUIライブラリであり、完全なフレームワークではないため、ルーティングやステート管理など、React自体ではカバーされていない機能を別のライブラリやフレームワークを用いて補う必要があります。このため、Reactを利用するプロジェクトでは、React以外のライブラリやフレームワークについても知識が必要になります。
- Redux
- React Router
- Axios
ー迅速な進化
Reactは急速に進化しており、新しいアップデートが頻繁にリリースされます。これは一方で、既存のコードが古くなったり、学習した知識がすぐに古くなる可能性があるというデメリットにもつながります。
ー設計決定の自由度が高い
Reactはある程度自由な設計が可能ですが、その自由度の高さは初心者や小規模チームにとっては少々難しく感じるかもしれません。適切なアーキテクチャやベストプラクティスを決定するには経験と知識が必要となります。
React.jsやVue.jsも学ぶことができるおすすめのプログラミングスクールに関しては【初心者用】フリーランスも目指せる!おすすめのプログラミングスクール16選で紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
Vue.js
Vue.jsは、JavaScriptフレームワークの一つで、ユーザーインターフェースの構築に使われます。2014年に元GoogleエンジニアのEvan Youによって開発されたVue.jsは、その簡潔さと高いパフォーマンスにより、特に小から中規模のウェブアプリケーション開発で広く採用されています。
Vue.jsで作成できるアプリ・サービス

- LP
- ポートフォリオサイト
- コーポレートサイト
- ウェザーアプリ(Yahoo!天気予報)
- ToDoリストやタスク管理システム
- ブログプラットフォーム
- アンケートフォーム
Vue.jsの主な特徴
- コンポーネントベースの構成
- シングルファイルコンポーネント
- ディレクティブ
- リアクティブデータバインディング
コンポーネントベースの構成
Vue.jsもReact.js同様にコンポーネントベースの設計を採用しています。これにより、再利用可能なコンポーネントを作成し、それらを組み合わせてアプリケーションを構築することができます。
以下、Vue.jsでのコンポーネントの記述例です。
sample.vue
1<template>
2 <div>
3 <p>{{ count }}</p>
4 <button @click="increment">カウントアップ</button>
5 </div>
6</template>
7
8<script>
9export default {
10 data() {
11 return {
12 count: 0
13 }
14 },
15 methods: {
16 increment() {
17 this.count++;
18 }
19 }
20}
21</script>
このコンポーネントでは、count
というデータプロパティを定義し、それを画面に表示しています。また、ボタンがクリックされたときにincrement
メソッドを呼び出し、count
の値を1ずつ増やすことができます。
シングルファイルコンポーネント
Vue.jsのシングルファイルコンポーネント(SFC)は、HTML、CSS、およびJavaScriptを1つの.vue
ファイルにまとめることができる概念です。以下は、シンプルなコンポーネントの具体例です。
sample.vue
1<template>
2 <div>
3 <button @click="increment">Increment</button>
4 <p>Count: {{ count }}</p>
5 </div>
6</template>
7
8<script>
9export default {
10 data() {
11 return {
12 count: 0
13 }
14 },
15 methods: {
16 increment() {
17 this.count++;
18 }
19 }
20}
21</script>
22
23<style scoped>
24button {
25 color: blue;
26 font-size: 20px;
27}
28p {
29 font-size: 18px;
30}
31</style>
この例では、ファイルの3つのセクションが使用されています。
- <template>セクション: HTMLを配置し、コンポーネントのマークアップを記述します。
- <script>セクション: JavaScriptを記述し、コンポーネントの状態とメソッドを定義します。ここでは
count
データプロパティとincrement
メソッドが定義されています。 - <style>セクション: CSSを記述し、コンポーネントのスタイルを定義します。
scoped
属性があるため、このスタイルはこのコンポーネントにのみ適用されます。
このようにシングルファイルコンポーネントは、コンポーネントのロジック、テンプレート、およびスタイリングを1つの場所に統合し、開発の管理と維持を簡単にしてくれます。
ディレクティブ
Vue.jsはAngularに似たディレクティブという概念を採用しています。これにより、HTMLタグ内で特殊なプレフィクス(例:v-if、v-for)を使って、HTMLの振る舞いを管理することができます。
以下は、Vue.jsでよく使用されるいくつかのディレクティブの具体例です。
1. v-bind: 属性のバインディング
1<a v-bind:href="url">Link</a>
この例では、url変数の値がhref属性にバインド(統合)されます。
2. v-model: 双方向データバインディング
1<input v-model="username" />
この例では、username変数の値がインプットフィールドと同期します。
3. v-for: リストのレンダリング
1<ul>
2 <li v-for="item in items">{{ item.text }}</li>
3</ul>
この例では、items配列内の各要素に対して<li>要素が作成されます。
4. v-if, v-else-if, v-else: 条件付きレンダリング
1<p v-if="seen">Now you see me</p>
2<p v-else-if="hidden">Partially hidden</p>
3<p v-else>Now you don't</p>
この例では、seen
とhidden
の値に基づいて、どの段落が表示されるかが決定されます。
5. v-on: イベントリスナーの追加
1<button v-on:click="doSomething">Click me</button>
この例では、ボタンがクリックされるとdoSomethingメソッドが呼び出されます。
リアクティブデータバインディング
リアクティブデータバインディングとは、データの変更が即座に関連するDOM要素に反映される概念です。
以下は、Vue.jsを使用したリアクティブデータバインディングの具体例です。
sample.vue
1<template>
2 <div>
3 <input v-model="message" />
4 <p>{{ message }}</p>
5 </div>
6</template>
7
8<script>
9export default {
10 data() {
11 return {
12 message: 'Hello, Vue!'
13 }
14 }
15}
16</script>
この例では、v-modelディレクティブを使用して、inputフィールドとmessageデータプロパティをバインド(統合)しています。ユーザーがinputフィールドにテキストを入力すると、messageプロパティの値が即座に更新され、その値が<p>タグ内に表示されます。
リアクティブデータバインディングにより、データとビュー間の同期を自動的に行うため、開発者は手動でDOMを操作する必要がなく、開発がより効率的かつエラーが少なくなります。
Vue.jsのメリット・デメリット
以下Vue.jsの主なメリットとデメリットです。
Vue.jsのメリット
- 学習しやすい
- 柔軟性が高い
- コンポーネントベースの構成
- 詳細なドキュメンテーション
ー学習しやすい
Vue.jsは他のフレームワークに比べて学習曲線が優れているとされています。HTML、CSS、JavaScriptの基本的な知識があれば、Vue.jsを始める際のハードルは低いと言えます。
ー柔軟性が高い
Vue.jsは非常に柔軟であり、さまざまなプロジェクトに適しています。小規模なものから大規模なSPA(シングルページアプリケーション)まで、対応することができます。
ーコンポーネントベースの構成
コンポーネントベースのアーキテクチャを採用しています。これにより、コードの再利用と保守性が向上します。
ー詳細なドキュメンテーション
公式ドキュメンテーションは非常に詳細で、使い始めるために必要な情報をすべて提供しています。
Vue.jsのデメリット
- リソースとコミュニティの規模がまだ小さい
- 日本語のリソースがまだ少ない
- 企業による採用率が低い
ーリソースとコミュニティの規模がまだ小さい
Vue.jsはReactやAngularに比べるとコミュニティが小さいため、リソースやサポートが少ないかもしれません。
ー日本語のリソースがまだ少ない
多くのリソースやライブラリがまだ日本語以外の言語で書かれています。英語が得意でない開発者にとってはこれが障壁となることがあります。
ー企業による採用率が低い
ReactやAngularに比べて大企業からの採用率が低い傾向にあります。これは就職やキャリア進行に影響を及ぼす可能性があります。
React.jsとVue.jsの使い分け方
React.jsとVue.jsはプロジェクトの特定の要件や開発チームのスキルセットによって、一方が他方よりも適している場合があります。以下に、それぞれのフレームワークが適しているシチュエーションについてまとめました。
React.jsを使うべきシチュエーション!
- 大規模なアプリケーションを作成する場合
- カスタム化が必要な場合
- モバイルアプリケーション開発
大規模なアプリケーションを作成する場合
Reactの強力なエコシステムと包括的なコミュニティサポートは、大規模なアプリケーション開発に適しています。
カスタム化が必要な場合
Reactはフレキシブルであるため、カスタマイズ化をしたいのであればReactは良い選択となります。
モバイルアプリケーション開発
React Nativeを通じて、Reactではネイティブアプリ開発も可能ですのでモバイルアプリ開発を行う場合はReactが適しています。
Vue.jsを使うべきシチュエーション!
- 中小規模のプロジェクトを作成する場合
- 細かいカスタマイズを必要としないプロジェクト
- 初心者に優しいフレームワークが必要な場合
中小規模のプロジェクトを作成する場合
Vue.jsはその学習曲線の緩さとセットアップの簡易さから、中小規模のプロジェクトに特に適しています。
細かいカスタマイズを必要としないプロジェクト
Vue.jsは”バッテリー内蔵”アプローチを採用しており、あらかじめ多くの機能が組み込まれていますので、細かいカスタマイズを必要としないプロジェクトにはVue.jsが良い選択となります。
初心者に優しいフレームワークが必要な場合
Vue.jsの文法は直感的で複雑性がないため、HTML、CSS、JavaScriptの基本的な知識があれば比較的簡単に学ぶことができます。
まとめ
React.jsとVue.jsはどちらも完成度の高いフレームワークで、それぞれに異なる特徴とメリットがあります。
どちらが「ベスト」かは、一概に言えませんが、初心者が学ぶにはVue.js、より高機能なアプリやサイトを作成したいのであればReact.jsが最適です。
ぜひ、自分の目的に合ったフレームワークを選び、開発に役立てみてください。


