初心者でも分かる!CSSとSCSSの比較ガイド。メリット・デメリットも

Webデザインの世界では、スタイリングとレイアウトを管理するためにHTMLとCSSという言語があります。
中でも「CSS」には効率性を上げる「SCSS」という便利なプリプロセッサがあります。しかし、これら二つの違いを正確に理解するのは難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、初心者でも分かるように、CSSとSCSSの違い、それぞれのメリットとデメリット、そしてどちらを選ぶべきかについて詳しく解説します。
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CSSとSCSSの違い
まずはCSSとSCSSの主な特徴を比較した表を作りました。
CSS | SCSS | |
文法 | シンプル | CSSと互換性がありつつも、 多機能 |
変数の使用 | × | ○ |
ネスト | × | ○ |
ミックスイン | × | ○ |
パーシャルとインポート | 非効率的 | 効率的 |
運用 | 直接ブラウザで動作 | コンパイラが必要 |
拡張子 | .css | .scss |
CSSとは

CSS(Cascading Style Sheets)は、ウェブページのデザインやレイアウトを制御するためのスタイルシート言語です。HTMLやXMLなどのマークアップ言語で構造化されたコンテンツに対して、文字の色やサイズ、配置などのスタイリングを適用する役割を果たします。
CSSの特徴
CSSの主な特徴として以下のような点が挙げられます。
- セレクタとプロパティ
- カスケーディング
- レスポンシブデザイン
- 外部ファイルの利用
- カスタムプロパティ
セレクタとプロパティ
CSSではセレクタを使用して、特定の要素やクラス、IDに対してスタイルを適用しまプロパティと値を使って具体的なスタイルを定義します。
style.css
1p {
2 color: red;
3 font-size: 16px;
4}
カスケーディング
CSSの「カスケーディング」は、複数のスタイルルールが同じ要素に適用される場合、どのルールが優先されるかを決定するメカニズムです。特異度やソースの順序などに基づいて適用されるスタイルが決まります。
レスポンシブデザイン

メディアクエリを使って、異なるデバイスや画面サイズに対応したデザインをすることができます。
外部ファイルの利用
CSSは外部ファイルとして保存し、HTMLファイルからリンクすることが一般的です。これにより、スタイルを一元管理し、メンテナンスが容易になります。
CSSをHTMLに読み込む方法に関しては【初心者用】CSSをHTMLに読み込む方法は3つ。それぞれわかりやすく解説します。で詳しいやり方を解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

カスタムプロパティ
CSS変数を使用して、反復する値を変数に格納し、コード全体で再利用することができます。以下具体例です。
style.css
1:root {
2 --primary-color: #4caf50;
3 --font-size: 16px;
4}
5
6body {
7 color: var(--primary-color);
8 font-size: var(--font-size);
9}
この例では、:rootセレクタ内で3つの変数(–primary-color、–font-size)を定義しています。これらの変数は、ページ全体で利用することができます。
CSSのメリット・デメリット

CSSのメリット
- シンプルな構文
- ブラウザの互換性
- 直接ブラウザで動作
ーシンプルな構文
CSSは基本的なプロパティと値を使ってスタイルを指定します。それは直感的で、学習曲線が緩やかです。
ーブラウザの互換性
CSSはすべてのモダンブラウザでサポートされています。そのため、特定のブラウザに依存することなく、デザインを制御できます。
ー直接ブラウザで動作
CSSは何もコンパイルすることなく、直接ブラウザ上で動作します。そのため、余分なツールや設定なしで即座に結果を確認できます。
CSSのデメリット
- 再利用性が低い
- コードの管理
- 限定的な機能
- ネストができない
ー再利用性が低い
CSSは、変数や関数の概念が存在しないため、同じスタイルルールを何度も書く必要があります。これは特に大規模なプロジェクトで時間と労力の無駄につながります。
ーコードの管理
プロジェクトが大きくなると、CSSは追跡と管理が難しくなります。例えば、特定のスタイルがどの要素に影響を与えるかを追跡するのが困難になることがあります。よってCSSは大きなプロジェクト向きではないと言えます。
ー限定的な機能
CSSは基本的なスタイリングのみが使用可能です。高度な機能、例えば条件付きルールや計算などは直接サポートしていません。これは、複雑なデザインを制作するときに大きな制約となることがあります。
ーネストができない
CSSでは、スタイルシートの中にあるスタイルルールを他のスタイルルールの中にネストする(入れ子にする)ことができません。これにより、コードの可読性とメンテナンス性が低下します。
CSSを使う際の注意点
CSSを効果的に使うためには、いくつかの注意点を意識するとよいでしょう。以下は、CSSを使用する際の一般的な注意点です。
- セレクタの特異度
- グローバルスタイルの使用
- コードの重複
- 命名規則
- コメントとドキュメンテーション
- 外部ライブラリとフレームワークの使用
セレクタの特異度
セレクタの特異度が高すぎると、後からスタイルを上書きするのが困難になる場合があります。できるだけ低い特異度を維持するようにしましょう。
グローバルスタイルの使用
グローバルにスタイルを適用すると、意図しない箇所にも影響を及ぼすことがあるため、適切にスコープを設定するか、特定のクラスに対してのみスタイルを適用するようにしましょう。
コードの重複
コードが重複すると、保守が困難になることがあります。共通のスタイルは、共通のクラスにまとめるなどして管理しましょう。
命名規則
クラス名などの命名規則を統一し、分かりやすい名前を使用すると、後からコードを読み返したり他の人と共同作業する際に便利です。BEMなどの命名方法を採用するとよいでしょう。
コメントとドキュメンテーション
コードの意図や特殊な処理、ブラウザ固有のハックなどをコメントで明記すると、後のメンテナンスが容易になります。
外部ライブラリとフレームワークの使用
必要に応じて外部ライブラリやフレームワークを使用する場合、バージョンの管理や依存関係の解決に注意が必要です。

SCSSとは

SCSSは、CSSの拡張されたバージョンで、CSSと完全に互換性があります。CSSのすべての機能に加えて、より高度な機能を利用することができます。これにより、綺麗で効率的なコーディングが可能になります。SCSSの特徴的な機能をいくつかご紹介いたします。
SCSSの特徴
SCSSの主な特徴として以下のような点が挙げられます。
- 変数
- ネスト
- mixin(ミックスイン)
- 関数と演算
- パーシャルとインポート
変数
SCSSでは、変数を使用して特定の値を保存することができます。これにより、一度定義した値を何度も再利用でき、変更が必要な場合は一箇所だけを修正すれば良くなります。
style.scss
1$primary-color: #ff6f69;
2
3.button {
4 color: $primary-color;
5 border-radius: 10px;
6}
ネスト
SCSSでは、セレクタを他のセレクタの内部に配置することができます。これにより、コードの構造をHTMLの構造に合わせて整理でき、可読性とメンテナンス性が向上します。
style.scss
1nav {
2 background-color: #333;
3 ul {
4 margin: 0;
5 padding: 0;
6 list-style: none;
7 li {
8 display: inline-block;
9 a {
10 color: white;
11 text-decoration: none;
12 padding: 10px 20px;
13 &:hover {
14 background-color: #444;
15 }
16 }
17 }
18 }
19}
この例では、nav要素内のul, li, aタグに対して、ネストされた形でスタイルが適用されています。さらに、&:hoverセレクタを使って、リンクに対するホバー効果もネストされて記述されています。
ミックスイン
ミックスインを使用すれば、一連のスタイルルールを定義し、それを他のスタイルルールの中に繰り返し適用できます。
1// ミックスインの定義
2@mixin button-style($color, $background) {
3 color: $color;
4 background-color: $background;
5 padding: 10px 20px;
6 border: none;
7 cursor: pointer;
8 &:hover {
9 background-color: darken($background, 10%);
10 }
11}
12
13// ミックスインを利用してスタイルを適用
14.primary-button {
15 @include button-style(white, blue);
16}
17
18.secondary-button {
19 @include button-style(white, green);
20}
21
22.danger-button {
23 @include button-style(white, red);
24}
この例では、button-styleというミックスインを定義しており、ボタンの基本的なスタイルとホバー効果を設定しています。色と背景色はパラメータとして受け取り、それぞれのボタンタイプで異なる値を指定しています。
関数と演算
SCSSでは、関数と演算子を使用して動的な計算を行うことができます。これにより、コード内で計算を行って値を生成することができます。
style.scss
1@function font-size($size) {
2 @return $size * 1rem;
3}
4
5body {
6 font-size: font-size(2); // 2remに変換される
7}
この例では、パディングとボーダーの変数を定義し、マージンの計算で加算演算子を使用しています。コンパイルされたCSSでは、マージンの値が12pxになります。
パーシャルとインポート
SCSSでは、パーシャル(小さなSCSSファイル)を作成して、それを他のSCSSファイルにインポートすることができます。これにより、スタイルシートをより管理しやすい小さな部分に分割することができます。
ーパーシャル
パーシャルは、他のSCSSファイルからインポートされるための小さなSCSSファイルです。パーシャルファイルの名前はアンダースコアで始めます。例えば、_reset.scss
というパーシャルファイルを作成し、以下のような内容を記述することができます。
reset.scss
1// _reset.scss
2html,
3body,
4ul,
5ol {
6 margin: 0;
7 padding: 0;
8}
ーインポート
インポートを使用すると、パーシャルファイルを他のSCSSファイルに取り込むことができます。例えば、上記の_reset.scssをメインのSCSSファイルからインポートすることができます。
main.scss
1// main.scss
2@import 'reset';
3
4body {
5 font-family: 'Helvetica, Arial, sans-serif';
6 font-size: 16px;
7}
この例では、main.scssファイルから_reset.scssファイルをインポートしています。@importディレクティブを使用する際には、アンダースコアと拡張子を省略することが一般的です。
SCSSの詳しい書き方についてはSCSSとは?独特の文法とそのメリット・デメリットを徹底解説でも解説していますのでぜひチェックしてみてください。

SCSSのメリット・デメリット
以下SCSSのメリット・デメリットに関して詳しくみていきます。
SCSSのメリット
- 変数の利用
- ネスト機能
- ミックスインと関数
- コードの分割とインポート
- 高度な機能
ー変数の利用
SCSSでは、色やフォントなどの値を変数として定義し、プロジェクト全体で再利用することができます。これにより、一貫性を保ちつつ、後から簡単に値を変更できます。
ーネスト機能
SCSSでは、スタイルルールを他のスタイルルールの中にネストすることができます。これにより、コードの可読性が向上し、保守が簡単になります。
ーミックスインと関数
これらの機能により、再利用可能なコードのブロックを作成でき、DRY(Don’t Repeat Yourself)の原則を遵守することができます。
ーコードの分割とインポート
SCSSでは、コードを複数のファイル(パーシャル)に分割し、必要に応じて他のSCSSファイルにインポートすることができます。これにより、コードの整理と管理が簡単になります。
ー高度な機能
SCSSは演算子、条件文、ループなど、CSSにはない高度な機能を利用することができます。これにより、より動的で柔軟なスタイルシートを作成できます。
SCSSのデメリット
- 学習コスト
- コンパイルが必要
- デバッグ
ー学習コスト
SCSSのハイクオリティな機能を利用するためには、それらの機能を理解し、適切に使用するための学習時間が必要です。
ーコンパイルが必要
SCSSはブラウザで直接解釈されないため、CSSにコンパイルするためのツールが必要です。このため、開発環境の設定が少し複雑になることがあります。
ーデバッグ
エラーが発生した場合、コンパイル後のCSSでエラーをデバッグする必要があるため、元のSCSSのどの部分が問題を引き起こしたのか特定するのが難しい場合があります。
SCSSを使う際の注意点
SCSS(Sassy CSS)を使う際には、CSSに関連する注意点に加えて、いくつかの特有の注意点を把握しておくとよいでしょう。
- コンパイラの管理
- ネストの深さ
- 変数とミックスインの再利用
- パーシャルとインポートの構造
- ソースマップの利用
- ライブラリとフレームワークとの整合性
コンパイラの管理
SCSSはプレプロセッサであり、ブラウザが解釈できる通常のCSSにコンパイルする必要があります。そのため、コンパイラ(例:Sassコンパイラ)のセットアップやバージョンの管理に注意が必要です。
ネストの深さ
SCSSではセレクタのネストが可能ですが、深くネストすると特異度が高くなりすぎる恐れがあります。ネストは適切な深さに抑えるよう心がけましょう。
変数とミックスインの再利用
変数やミックスインを効果的に使用するとコードの再利用が容易になりますが、過剰に使用するとコードが複雑になることがあります。バランスを取ることが重要です。
パーシャルとインポートの構造
パーシャルとインポートを使ってコードを分割する場合、ファイル構造と依存関係を明確に管理する必要があります。
ソースマップの利用
デバッグの際に、ブラウザの開発者ツールでSCSSファイルを直接参照できるように、ソースマップの生成を有効にすると便利です。
ライブラリとフレームワークとの整合性
SCSSを他のライブラリやフレームワークと組み合わせる際には、互換性やカスタマイズの方法に注意が必要です。
CSSとSCSSの使い分け方

①プロジェクトの規模

プロジェクトの規模は、CSSとSCSSを選択する際の重要な要素です。
小・中規模なプロジェクト
小規模なプロジェクトや単純なWebページでは、CSSの方が簡単で手軽にスタイリングを行うことができます。
大規模なプロジェクト
しかし、大規模なプロジェクトや複雑なWebアプリケーションでは、SCSSの提供するハイクオリティな機能(変数、ネスト、ミックスイン、関数など)を利用して、より効率的にスタイリングを行うことができます。
②チームのスキルレベル

チームのスキルレベルも、CSSとSCSSを選択する際に参考になる要素です。
初心者や非開発者がいるチーム
開発チームのスキルレベルも、CSSとSCSSの選択に影響を与えます。CSSは学習曲線が緩やかで、比較的簡単に勉強できます。そのため、初心者や非開発者がいるチームでは、CSSが良い選択となるかもしれません。
経験豊富な開発者がいるチーム
一方、SCSSは学習曲線がやや急ですが、使いこなすことで非常に効率的にコーディングを行うことができます。そのため、経験豊富な開発者がいるチームでは、SCSSを採用すると良いでしょう。
③メンテナンスと拡張性

プロジェクトが短期的なものなのか、もしくは長期的なものなのかによってもCSSとSCSSを選択する際に参考になる要素と言えます。
短期的なプロジェクト
CSSは直感的でシンプルな構文を持っていますが再利用性や拡張性が限定的です。短期的なプロジェクトは拡張性やメンテナンスがあまり必要ないと言えるのでスタイルシートがシンプルなCSSを選択するのがベストです。
長期的なプロジェクト
一方、SCSSは変数やミックスイン、パーシャルなどの機能により、再利用性と拡張性が高いです。また、ネストによりコードの可読性も向上します。このため、長期的にメンテナンスや拡張を行うプロジェクトでは、SCSSの採用を検討すると良いでしょう。
それぞれのシチュエーションと要件により、CSSとSCSSのどちらを選択するべきかが異なります。適切なツールを選択することで、プロジェクトの効率性と成功率を高めることができます。
まとめ
以上、CSSとSCSSの違いやそれぞれのメリットとデメリット、そして使い分け方について解説してきました。
それぞれの違いを理解し、より適切なツールを選ぶことで、Webデザインの世界はさらに広がります。
ぜひ、ご自身のプロジェクトに役立ててください。



